事業承継計画はいつから始めるべきか?
目次
1. はじめに:中小企業を取り巻く事業承継の現実
2. 「後継者が決まってから」では遅すぎる理由
3. 承継準備フェーズの3ステップ
4. 早期スタートがもたらす3つのメリット
5. 経営者自身の「心の準備」の重要性
6. まとめ
日本全国の中小企業経営者の平均年齢は60歳を超え、経営者の高齢化がますます進んでいます。その一方で、後継者が決まらずに廃業に追い込まれる企業も後を絶ちません。経済産業省のデータによると、今後10年で約127万社が後継者不在によって廃業リスクを抱えており、これは日本経済全体にとっても大きな損失です。では、こうしたリスクを回避するために、事業承継計画は一体いつから始めるべきなのでしょうか?
多くの経営者は「そろそろ引退を意識したときに考えればいい」と思いがちです。しかし、それでは手遅れになることが少なくありません。事業承継とは、単に「社長のイスを譲る」ことではなく、「経営を受け継ぎ、継続させる仕組みを整えること」です。そのためには、後継者の選定・育成・信頼関係の構築・従業員や取引先との調整・株式や資産の移転といった多くの工程が必要であり、少なくとも5〜10年の準備期間が必要だとされています。
事業承継の準備期間は、大きく次の3段階に分けられます。
Ⅰ 後継者の選定フェーズ(5〜10年前)
誰に継がせるのか、親族か、役員か、外部人材か。選定の段階では、会社の将来像や後継者候補の資質、従業員の反応など多面的に考える必要があります。
Ⅱ 後継者の育成フェーズ(3〜5年前)
経営理念、業界知識、財務、リーダーシップなど、会社を任せられるように育成します。現場経験や意思決定のトレーニングが重要です。
Ⅲ 承継実行フェーズ(1〜3年前)
代表権交代手続き(株式の移転や代表者変更登記手続き等)、社内外への正式発表、役職変更、経営体制の再構築など、実務的な承継が行われます。
これらを順を追って着実に進めるには、やはり「そろそろ辞めたい」と思ってから動き出すのでは間に合いません。引退時期から逆算して、最低でも5年前から始めるのが理想的です。
では、早く始めることにはどのような利点があるのでしょうか?
Ⅰ 人材育成の時間を確保できる
経営者としての器を育てるには時間がかかります。早期に育成を始めることで、現場経験や判断力をじっくり磨けます。
Ⅱ 失敗・軌道修正の余地がある
一度後継者に任せてみて、うまくいかなければ育成方法や体制を見直す時間が取れます。余裕があれば「試行錯誤」も可能です。
Ⅲ 社内外の信頼を築く時間がある
後継者がじっくりと社内外と信頼関係を築くことで、承継後の混乱や不安を減らすことができます。
また、事業承継には経営者自身の「心の準備」も重要です。多くの創業者や現経営者は、長年築いてきた会社を手放すことに大きな不安や葛藤を感じます。ところが、早くから計画を立て、徐々に役割を移していくことで、「任せても大丈夫だ」という安心感を得ることができ、自信をもって引き継ぐことができます。
事業承継は「引き継ぐためのプロジェクト」であり、準備には多くの時間とエネルギーを要します。「まだ早い」と思っていたら、あっという間に時間は過ぎてしまいます。後継者が社内にいるかどうかが未定でも構いません。まずは、会社の将来と自身の引退について、一度棚卸ししてみることが第一歩です。
事業承継は、会社の未来へのバトンリレーです。大切なバトンを落とさず、次世代にしっかり渡すためにも、「早すぎる準備」はありません。
最善のタイミングは「今」です!